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お知らせ

第3回センカクモグラを守る会シンポジウム ご報告

第3回センカクモグラを守る会シンポジウム ご報告

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はじめに

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野口健代表

はじめまして、野口健です。本日はお越しいただき誠に有難うございました。「センカクモグラを守る会」を2010年に立ち上げて、今回で3回目のシンポジウムを迎えます。この会を立ち上げたきっかけは尖閣諸島沖で起こった漁船衝突問題でした。その当時、(2010年夏)私はアフリカに行っており、現地でそのニュースを知りました。本日の会は、領土問題や政治的な問題ではありませんが、アフリカでは道路を作るなどの援助において中国の影響が非常に強いように感じられました。言い換えれば、それを入り口にして、アフリカの資源を虎視眈々と狙っているような。アフリカの新聞でも近年では、中国の支援の陰にはアフリカの資源があると書かれるようになっています。

そのような中、日本で漁船衝突問題が起きたニュースを知りました。日本がこの問題に対して、どれだけ危機感があるのかな?と感じていた時に、ふと思い浮かんだのが、このセンカクモグラでした。なぜ、このセンカクモグラがでてきたかというと、石原慎太郎知事(当時)から小笠原諸島を世界遺産にするために2002年より東京都の「エコツーリズム・サポート会議」の委員として、主に小笠原諸島におけるエコツーリズムの推進に携わってきた経験からです。

小笠原と色々と携わる中で、人為的に持ち込まれたヤギによる生態系の破壊が深刻化していることを知りました。小笠原には、その土地にしか生息していない「固有種」が多く確認されており、ヤギをはじめとするいわゆる「移入種」により「固有種」の存在が脅かされていたことを知りました。その時に、SNSで尖閣諸島でも同じくヤギの増加や糞尿などによる固有種生存の危機を知ったのです。この時は小笠原問題でいっぱいでしたが、小笠原が世界遺産になり一段落つき、この度アフリカで尖閣諸島の漁船問題を知り「センカクモグラを守る会」を立ち上げて、東京都が小笠原諸島で行ってきたようなヤギの駆除などが尖閣諸島でも出来ないかと考えました。そこで、アフリカから山際大志郎先生に連絡をし、更に調べたてみたら富山大学の横畑泰志准教授がセンカクモグラの研究をされているのを知り、お声掛けをして3人で「センカクモグラを守る会」を立ち上げた次第です。

そして昨年、東京都が尖閣諸島を購入するとの話があり、これは山が動くかもしれないと思いました。なぜなら私自身が東京都レンジャーの名誉隊長として調査に行くことになっていたからです。いよいよ山が動くなと思っていましたが、結局は国が購入することになり、この話は立ち消えました。購入した以上は国がきちんとあの島を管理していくように、この会としても訴えて行きたいと思います。そしてこの会を通じて、尖閣諸島がどこにあるのか?どのような島なのか?多くの日本人がこの島に関心を持つ切っ掛けにしてほしいと思います。

お祝いメッセージ

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小池百合子 「センカクモグラを守る国会議員の会」会長

皆様こんにちは。「センカクモグラを守る議員連盟」の会長に就任した、元環境大臣、小池百合子です。

我が国の領土である尖閣諸島における希少種、センカクモグラを守るという事は、我が国の固有の領土を守ると同様に、自然、生物の多様性、固有性を守るという観点からもいずれも大きな意味があると考えています。

改めてセンカクモグラグラを守る議員連盟も再編をしたところで、これまでは若手のみだったそうですが私も入れて頂きました。そして、会長を務めさせてまいります。

これからも、「日本の主権を守る」ことと同様に「自然そして、生き物たちをしっかりと守っていく」ことを、今日のシンポジウムを通じて皆様と意識を共有して行ければ、大変うれしく思っております。

これからも「センカクモグラを守る会」日本を守る会、同様皆様からのご協力を頂戴したいと思います。本日のシンポジウムに伺えませんけれども、ご盛会を心からお祈りお申し上げます。

パネルディスカッション

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パネリスト

内閣府大臣政務官・衆議院議員

山際大志郎 (やまぎわ だいしろう)

昭和43年生まれ、神奈川県で育つ。44歳。東京大学院卒(獣医師・獣医学博士)。クジラの研究で博士号取得。川崎・横浜に動物病院を複数もつ獣医師かつ経営者であったが、「生命」があまりに粗末にされる現状に危機感をもち政治家に転身。自民党神奈川県初の公募候補として平成14年衆院選に出馬するも落選。平成15年、平成17年と連続当選を果たし教育基本法改正を始め主に教育分野で活動する。平成21年苦杯をなめるも平成24年3期目の当選。平成24年12月より現職。著書に「闘え、クジラ人」(成山堂書店)

東海大学海洋学部教授

山田吉彦(やまだ よしひこ)

学習院大学を卒業後、金融機関を経て日本財団(旧:日本船舶振興会)に勤務。海洋船舶部長、海洋グループ長、広報チームリーダーなどを歴任。2008年、東海大学海洋学部准教授に就任、海洋政策研究財団研究員を兼任する。同年、埼玉大学大学院博士課程を修了(経済学博士)。09年4月より現職。12年7月に東京都の専門委員に選任され、同年9月2日に東京都の尖閣諸島現地調査に同行。領土問題、海上保安体制、現代海賊問題の第一人者。著書・論文に「海のテロリズム」(PHP新書)「日本の国境」(新潮新書)「海賊の掟」(同)「日本は世界4位の海洋大国」(講談社+α新書2010年)「天気で読む日本地図」(PHP新書)「日本国境戦争」など多数。千葉県出身、50歳。

富山大学大学院理工学研究部准教授

横畑泰志(よこはた やすし)

岐阜大学農学部獣医学科を卒業後、1989年に北海道大学大学院獣医学研究科博士後期課程を修了(獣医学博士)。現在は富山大学大学院理工学研究部・理学部生物圏環境科学科 野生動物保全学研究室准教授。環境省第3次レッドリスト見直し検討委員会哺乳類分科会委員、日本生態学会自然保護専門委員会委員(魚釣島要望書アフターケア委員会委員長)、日本哺乳類学会哺乳類保護管理専門委員会幹事。野生動物研究者としてモグラ類の生態研究などを行い、地元の自然保護運動にも加わると同時に、1997年より魚釣島のヤギ問題に取り組んでいる。著書「食虫類の自然史」など

アルピニスト・東京都レンジャー名誉隊長

野口健(のぐちけん)

1973年アメリカ・ボストン生まれ(39歳)、亜細亜大学卒。了徳寺大学客員教授、富士山レンジャー名誉隊長。高校時代に植村直己氏の著書『青春を山に賭けて』に感銘を受け、登山を始める。1999年、エベレストの登頂に成功し、7大陸最高峰世界最年少登頂記録を25歳で樹立。2000年からはエベレストや富士山での清掃登山を開始。以後、全国の小中学生を主な対象とした「野口健・環境学校」を開校するなど積極的に環境問題への取り組みを行っている。また2007年12月には大分県にて開催された「第1回アジア・太平洋水サミット」の運営委員として、「温暖化による氷河の融解」を取り上げる先導役を務め、各国元首級への参加を呼びかけた。現在は、清掃活動に加え地球温暖化による氷河の融解防止にむけた対策に力を入れており、北海道洞爺湖サミットでは政府に対し現場の状況を訴える等、精力的に活動を行っている。著書『富士山を汚すのは誰か―清掃登山と環境問題』(角川書店)など

1.センカクモグラを守る国会議員の会について

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司会

「センカクモグラを守る国会議員の会」について議連メンバーでもある山際先生より改めてご説明をお願い致します。

山際大志郎 内閣府大臣政務官・衆議院議員

「センカクモグラを守る会」は日本は領土問題はないと申しておりますが、とかく領土問題として取り上げられるこの尖閣諸島に関して、そうではなく環境問題として、純粋にとらえて行こうじゃないかと考え、横畑先生、野口健さん、そして獣医士としての山際大志郎が立ち上げた会です。立ち上げた時は、ちょうど私自身、議員活動をお休みしていた時期(浪人中)でしたが、2012年12月の衆議院議員選挙で国会に戻りましたので、今は議員連盟の一員としても活動をサポートしていきたいと思います。

そして、議員連盟はもともと若手の議員連盟として当時無所属の城内実先生(現自民党外務政務官)が中心になって立ち上げてくださいました。今日はその立ち上げのメンバーでもある柿澤未途衆議院議員もお越しですので、まずはじめにご挨拶をお願い致します。

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柿澤未途 衆議院議員・みんなの党

皆様こんにちは。只今、ご紹介を頂きました、「センカクモグラを守る若手国会議員の会」の設立当初からメンバーの一員として加えさせていただいている みんなの党の柿澤未途ともうします。この議員連盟は山際さん、野口さん、横畑先生の3人ではじめられた「センカクモグラを守る会」の側面支援をする議員連盟として2年前に設立しました。今日は土曜日という事もあり、国会議員連盟のメンバーの多くは選挙区に戻っており、伺えませんでしたが、東京選出の私が日程の合間を見て御邪魔をさせて頂きました。皆様と同じ思いで多くの国会議員が集まって勉強会も行わせていただいております。先日3月15日に議員会館内で山田教授、横畑准教授にもお越しいただき議連でお話を頂きました。私は時間の関係で丁度、横畑先生のパートをお伺いする事が出来なかったのですが、本日お伺いし、こんなに面白い方だという事が分かり、本日来てよかったと思っております。

私自身も漁船衝突直後に、ある種の日本固有の領土である尖閣諸島の問題として上空を飛行機で飛びアピールをするという形で尖閣諸島にかかわってきました。そして、議連に参加をして初めて尖閣諸島が固有種や希少種がいる自然の宝庫であり、それらが絶滅の危機にさらされている事を知りました。これからも、今日のパネリストの方々の色々な活動の側面を支援しながら、皆さんとともに、この素晴らしい尖閣諸島を守っていくために頑張って行きたいと思います。今日のパネルディスカッション開催お疲れ様でございます。

山際大志郎 内閣府大臣政務官・衆議院議員

議員連盟といたしましては、両学者の先生からお話がありましたように、生物学的にどのように尖閣諸島に絡んでいくかについて、どうしても政治的に乗り越えなければならない事が出てまいります。そこの部分を我々議員連盟でサポートをしながら、問題解決されるように一つ一つやってまいります。今後とも宜しくお願い致します。

*「センカクモグラを守る国会議員の会」の発足経緯

2011年7月7日「センカクモグラを守る若手国会議員の会」発足「センカクモグラを守る会」と連携して行動をする事を目的に、超党派の中堅若手国会議員5名で発足

  • 民主党・泉健太(いずみ けんた)衆議院議員
  • みんなの党・柿沢未途(かきざわ みと)衆議院議員
  • 無所属(当時)現自民党・城内実(きうち みのる)衆議院議員
  • 自民党・古川禎久(ふるかわ よしひさ)衆議院議員
  • 国民新党(当時)現無所属・森田 高(もりた たかし)参議院議員

・2012年3月15日「センカクモグラを守る国会議員の会」に改名し、再発足
会長:小池百合子元環境大臣
事務局:城内実衆議院議員、山際大志郎衆議院議員

2.山田吉彦教授への質問

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野口健代表

尖閣諸島の保護の在り方で、例えば西表や石垣島などの国立公園の中に、この尖閣諸島を含めるのか?または山田先生がおっしゃっている海洋保護区に入れるのか?僕らは専門家ではないので単純に尖閣諸島は西表や石垣島に近いので、国立公園内に入れ込めばいいのではとの発想になるのですが、先生のおっしゃられていた海洋保護区、これは日本にないですよね?海洋保護区とは世界でどのような位置付けでしょうか?また、現在の状況は?そして保護区にする意味などをお教えいただけますか?

山田吉彦教授

海洋保護区という概念についてですが、日本には明確な海洋保護区という規定はありません。これは世界的にもありません。2010年愛知県で行われたCOP10(第10回生物多様性条約締約国会議)の中で、世界の海の10%を海洋保護区として管理していくという合意事項が示されました。

ただ、何をもって海洋保護区というのか?日本の場合は政府に見解を聞くと、日本が管理している領海+EEZの8%は海洋保護区だという言い方をします。これは、どういう概念かというと日本の場合、国立公園・国定公園周辺海域、例えば瀬戸内海などは、まるまる入っている。あるいは漁業における漁業規制区域、水産資源の保護をしている海域を全て保護区だという言い方をしている。しかし世界的に見て、この見解がこのまま通じるかというと微妙であると思います。世界的水準からみると日本が海洋保護区と言えるのは0.8%程度だと言われている。
国立公園・国定公園概論の中で日本人はほとんど陸地という概念でしか物を見てこなかった。その周辺の海をどのように管理していくのか?目が向いていない。新しい概念を作っていく。これは生物多様性条約の締約国の一員であれば、本来明確な海洋保護区の概念を作らなければならない。これは、環境省が中心なのか?あるいは総合海洋政策本部なのか?。さて、みなさん、海洋政策担当大臣というのがいるのをご存知ですか?知らないでしょ?山本一太沖縄担当大臣なんですよ。国民が知らないような海洋政策担当大臣...。しっかりと総合海洋政策本部を中心に概念を作ることが必要だと思います。

さて、海洋保護区について2006年ブッシュ政権が、北西太平洋に全長1931キロに及ぶ世界最大級の海洋保護区「北西ハワイ諸島海洋ナショナルモニュメント」(現パパハナウモクアケア海洋ナショナルモニュメン)を設けました。これは、国立公園のようなものですが国内のルールの中で、許可なく船舶が通航し、観光や商業活動が行われ、動植物が捕獲されることに制限を課すという明確な概念を作った。1931キロという長さの海域で、島が50以上もあるので、全てを管理することができないから海を丸々管理する方法を取った。中国やロシアの漁船が来て上陸して何をされるかわからない。だから、海を全部管理していきましょうということ。今は衛星でも管理しています。この海域は今、複合世界遺産になっています。アメリカは、国際社会の目をみている。広い海域すべを管理できないから国際社会の目を見ているんです。これが海洋保護区なんです。かといって、これに罰則があるのかというと、明確な罰則規定は国内法に準じます。あくまでも、日本国内の法律をつかう。この北西ハワイ諸島海洋ナショナルモニュメントの場合は、アメリカの法律が適用される。当然、中国などが来て勝手に漁をし過ぎた場合、日本の場合は日本の国内法で裁くと宣言すればいい。例え先方が対立して来たとしても、「じゃ~中国は乱獲をしないのか?」「海洋環境を汚染していても良いのか?」という事を締約国同士で国際的な場で投げかける。初めてここで強制的に話し合いをせざるおえない。逃げている中国を引き留めて「このまま乱獲をしていいのか?」「マグロを網で取っていていいのか?」などを投げかけることが出来る。そして海の海流に黄砂に交じって重金属が海に落ちているんじゃないか?。PM2.5の影響は海流には出てこないのか?そういう事も調査していきたい。そういう事をやる海域に出来るのではないかと考えています。

野口健代表

例えば中国が漁業目的ではなく領土問題をアピールするために上陸という目的から入ってきても、この海洋保護区として取り締まりが出来るのでしょうか?

山田吉彦教授

海洋保護区として世界的に流域を制限しているだということを訴える。そこに、不法な上陸行為があったという事、国際的にみてこれは許されることなのか?を投げかける事ができる。今は日本と中国が勝手にやっている事という概念しかない。

もう一つは、じゃあ漁民が上陸したからと言って、日米安全保障条約第5条が適用されるかというと軍隊でない限り適用されない。国際社会に訴えるためには国際的な同意のもと「流域制限をしているんだ」、「環境を守らないといけないから勝手に上陸されては困るんだ」、という事を訴えていく。その話し合いの為のテーブルとして生物多様性条約を使うことが一つの手法だと思います。

*日米安全保障条約第5条とは

1 各締約国は、日本国の施政の下にある領域における、いずれか一方に対する武力攻撃が、自国の平和及び安全を危うくするものであることを認め、自国の憲法上の規定及び手続に従つて共通の危険に対処するように行動することを宣言する。

2 前記の武力攻撃及びその結果として執った全ての措置は、国際連合憲章第51条の規定に従つて直ちに国際連合安全保障理事会に報告しなければならない。その措置は、安全保障理事会が国際の平和及び安全を回復し維持するために必要な措置を執つたときは、終止しなければならない。

司会

山田教授、有難うございました。今、野口さんや山田教授の話の中にも上陸に関する事がありました。山際政務官、これは衆議院選挙前の話で恐縮ですが、2012年8月29日に改正・海上保安庁法が成立し9月25日より施行されました。
これは、どのような法律なのでしょうか?

山際大志郎内閣府大臣政務官

ごくごく簡単に申し上げますと、海上保安官は海の警察です。警察行為は警察官が陸上で行うことです。海の警察官としては海にある島の上で何かが起きた時に、そこは海ではなく陸地なので警察権を行使して警察官としての振る舞いが出来ない。というのが、それまでの法律でした。しかし日本には離れ小島が沢山ある。離れ小島に不法者が上陸して違法行為をしているという時に、海上保安官がそこに上陸して何も手出しができないという事は如何にもこれは、おかしいだろうという事もあって、警察官が来ることが出来ないという条件付きの場合、海上保安官が警察官と同じ振る舞いが出来る。警察官が持っている権限を行使できるようにするというのが簡単に言うと法律の中身です。

司会

山際政務官、この改正法は現場の海上保安庁の職員にとっては非常にセンシティブな問題になってくるのかな?と思うのですが、ただ、この法整備によって漁民などが上陸した場合でも、対応が出来るようになったという事ですね。制度面は整いましたが、運用面での問題点はないのでしょうか?

山際大志郎内閣府大臣政務官

運用上の問題点は大いにあり得ると思います。上陸をした瞬間に不法入国となりますから、警察官は不法入国者を逮捕拘束することが出来ることになっています。その文脈で言えば、漁民であれ、なんであれ捕まえる事は可能だと思います。しかし実際にそれらを捕まえた後、日本の国内法規によってきちんと罰することが出来るかといえば、今までの経緯を見ていれば皆様もお分かりの通り、有耶無耶なうちに国外に退去させる。そして退去させた者がその国で英雄視されて、明るみに出てくるという悔しい思いを私はしてきました。
運用上の問題で、本当に日本国内に入ってきたものに関しては日本国内の法律によって裁くという、これが出来るかどうかは次に同じような問題が起きた時に現政権が試されていると言ってもいいのではないでしょうか?

山田吉彦教授

中国側がどうなっているか?というと、中国の国会にあたる全人代で法改正をしている。今まで漁業、そして海関という船は海上管理だけで実は逮捕権もなく警備だけをしてきた。漁船も漁業だけが目的だった。この度、5龍と呼ばれる海上管理の4つが統合されて海洋管理、漁業管理、税関、そして武装警察・公安部が一体となって警察権をもって海に乗り出してきた。今までは漁業という目的で出て行って島の周りを回ってきていた。今は、急に海上保安庁は厳しくなってきている。なぜならば、中国側が日本の漁船の拿捕(だほ)を狙っているからだ。中国側は日本の漁船を拿捕することを狙っている。彼らは逮捕できる権限を持ってしまった。その前に早くここ尖閣諸島周辺海域にある問題というのは、世界的にも理解させる問題で、それをしっかり管理しているのが日本なんだというスタンスを示さなければならない。

私はこの尖閣諸島の固有種、自然を守るという事は国際社会にも納得してもらいやすい、そして、かの国は自然環境保全なんてことは到底できない。日本がやらざるを得ない。自身をもってやるべきことなんだと、向こうが警察権を行使する前にしっかりとした主張をしなければならない。

司会

有難うございました。それでは次に横畑泰志准教授への質問に移らせていただきます。野口健さん何かございますか?

3.横畑泰志准教授への質問

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横畑泰志准教授パワーポイントデータ

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野口健代表

環境省のレッドリストを見れば、尖閣固有の種というのは10種であるという位置づけになっている。先生の話では13の固有種および、2つの固有変種があるとのこと。このあたりの相違はなんなのでしょうか?先ほど、おっしゃられていた、発見からリストに記載されるまでのタイムラグなのでしょうか?

横畑泰志准教授

そうですね。センカクモグラでも発見されてから記載されるまでに10何年もかかりました。この間、何をしていたかというと日本中の何百個というモグラの頭蓋骨と、たった一個のセンカクモグラの頭骸骨を比較していたのであれだけの時間がかかった。ほかの生物でいえば先ほどお伝えした巻貝やダニ、クモ、アリなど。アリの場合は捕まえた人が標本を持っていたのですが、海外調査の折にお亡くなりになられた。だから、その標本がどこにあるか?私もわかりません。現在のところ、何かしら名前がついている、名前はついていないが論文には書かれている、将来は申請したりしますよ、というのを数えると先ほどの数になる。環境省がたまに10種類というが、これは、いい加減なものというか、予告編(名前の無いもの)を除いた数になります。だから環境省の10種類には根拠がないものではない。実は昨年6月に山田教授とともに衆議院で参考人招致をされた際に、最初に私がこれを話したにもかかわらず、ある議員さんは私が話をした時に寝ていたのか?もう一度その話を聞いてきた。私も二度同じことを答えましたが、環境省の肩を持たなければいけない理由が私にはあります。
レッドリストを決める委員の一人が私なんです(笑)。だから、環境省がいい加減だと言われると私もいい加減だという事になるので、お手柔らかにお願いしますと、その時言って笑いを誘った。ま~数え方というのは如何様にでもなります。ただ、一番言いたいことは未記載の物も含めて、固有種がいっぱいいるんだと、ひょっとしたら30・40と増えるかもしれません。その事をまず肝に銘じてほしい。

野口健代表

これは、山際政務官への質問でしょうか?小笠原でのヤギの駆除は確か東京都が小笠原村に委託をしてやりました。尖閣諸島でのヤギの捕獲なり駆除をする場合、国がやるのか?国がやるのが難しいとなった場合、民間団体に委託するのか?
と言いますのは、3月15日に衆議院議員会館で行われたセンカクモグラを守る議員連盟の総会で、ある先生からヤギの駆除に関して国ではできないから民間団体でやってもらいたい旨の発言がありました。

ヤギの駆除をする場合、やはり国がやるのが良いのか?それとも我々のようなセンカクモグラを守る会などが有志を集めて上陸し、駆除するのが良いのか?どのような形でやるのが良いのか?具体的に教えて頂きたい。

山際大志郎政務官

まずはじめに、尖閣諸島のあの地形とあの広さの島で500頭以上のヤギがいる。人的資源として、どのような技術を持った人がどれだけ必要か?学者の御二方にお伺いしたいのですが。

横畑泰志准教授

尖閣諸島のヤギの駆除に関して以前、鹿を専門にする先生にお話を聞いたことがあります。鹿も日本中で増えていますからね。その先生の答えは簡単でした。「私に1千万円くれたらあの島のヤギを駆除しますよ」と。確かに極端な事例ですが、尖閣諸島のように小さな島では、人数が多いとかえって同士討ちをしそうで危険です。ワンマンアーミーでやるのも一つの考えかも知れません。もう一つの極端な事例は柵を張って一網打尽にすることです。
あとは、色々なバリエーションがあると思いますが、これは小笠原でヤギを駆除した中心メンバーにでも上陸調査をしてもらって、考えて貰う事になるんだと思います。

野口健代表

尖閣の場合、ヤギを駆除した後、その処理はどのようにするのでしょうか?死体は、その場で焼却するのか?持って帰ってくるのか?

横畑泰志准教授

動物の死体の処理は私が何時もやっている事なんですが...。いつも困ります。尖閣のヤギの駆除に関してはある人に言われたのは「ほっておけばよい」と...。確かに亜熱帯気候の場合は物質の分解速度が速い。ヤギが奪った有機物は、そのままあの島の土に返してやった方が良いのかなとも思います。たぶん大型の肉食動物がいるわけではないので、主役はハエになると思います。一時的に大量のウジが発生し、一瞬にして骨だけにしてくれる。大量の骨が残りますが、骨も何時かは風化してカルシュウムになり土に帰っていく。ですから、あえて何もしないのが答えなのではないでしょうか?

山田吉彦教授

東京都の時もヤギの駆除及び死体の処理に関して話が出ました。駆除をするのであれば一時期に一斉にやらなければならない。死体をほったらかしにしていれば一時的にはハエなどのヤギを分解する生物が大量発生する問題もあります。1つの対処法は、穴を掘って埋める。スナイパーに1千万円払うのは難しいので(笑)。

山際大志郎内閣府大臣政務官

現実問題としては、今、お二人の先生方にお話し頂いたようなことになるんだと思います。前者の、ゴルゴ13のような方を呼んで駆除する事は、実際問題難しいと思いますが...。

おそらく調査団を一度派遣する中で、そのような専門家に入っていただき、あの地形であの広さであればどのような対処方法があるのか?
そして、国の方にそのような作戦を遂行できるようなエキスパートがいるかといえば居ないと思いますので、そのような事に携わった経験者にチームを組んでいただき、対処するのだと思います。後は、費用の問題ですね。

山田吉彦教授

費用に関してですが...。東京都が集めた14億7千万円について、都の専門委員として皆様にご報告をしなければなりません。お預かりしたお金は今、基金になっています。国が明確に島を管理する手法が決まったら、国にお渡しをする。それを使って国には活動をしていただく。私は是非、調査とヤギの駆除のためにこの基金を使って欲しいなと考えております。国が出来ないのであれば、国が発注を出して14億7千万円のお金を有効に利用して行く。それがこの島の開発の第一歩であると思っていますし、皆様からお預かりをしたご浄財の使い道として納得のいくものなのではないかなと思います。

横畑泰志准教授

魚釣島のヤギの駆除が小笠原と大きく違う点は、魚釣島に森林が多く残っているということです。媒島(なこうどじま:小笠原諸島の島の一つ)のように何もない島であればある意味簡単に柵を張って追い込みが出来る。魚釣島は幸か不幸か?まだ森林が沢山あるので、あそこで柵を張り巡らせて追い込むのは難しい。逆にみると日本の中でヤギのいる島は南西諸島を中心に山口県の離島を含めて10数カ所あるんですね。そしてどこの島も固有の自然を抱えているので、最終的には全てヤギを取り除かなければなりません。はげ山になってからヤギを駆除したのでは手遅れですので、魚釣島のようにまだ木が沢山生えているところでヤギを駆除する最初のモデルケースにしたいと思います。政治的には一番難しい島かもしれませんが、魚釣島で出来れば、他の10数か所でも出来るという希望が持てる。だからこそ、ヤギを駆除することは大きな意義があるのだと思います。

あと、小笠原などヤギを駆除した島に比べて、魚釣島は少し大きな島なんですね。大きいと言っても3.8㎢なんですが...。その他の島、例えば媒島(なこうどじま)などは1㎢だし、他はそれ以下だったりします。面積が大きいというのも一つの問題ですが、これをクリアーすれば、新しいモデルケースになる。

そして、ヤギのいる島が10数か所あると言いましたが、一番大きな島は奄美大島だと思います。ここは人が住んでいて本来管理できるはずなのに管理できていない。魚釣島とは大きく違いますが、ただ森が沢山残っていて、ヤギがいて、 追われると断崖絶壁に逃げ込んで手が打てなくなる状況などを考えると魚釣島とよく似ているのだと思います。おそらく魚釣島でヤギの駆除をはじめたら、同じような状況になると思います。そして、駆除に関して海の上から撃つなど色々なことが考えられますが、固有種がいっぱいいるという事で、優先順位をつけるのであれば、魚釣島を先ず初めにどうにかしなければなりませんが、これをすることによって、大きな前進が国内的にあるのだと思います。是非、何とか頑張りたいと思います。

野口健代表

第2回目のシンポジウムの時だったかと思うのですが、その時もヤギの駆除の話になりました。その時は終了後、私のHPなどのSNSが大荒れしまして...。ヤギを駆除する事は絶対ゆるさないという意見が沢山寄せられました。要するに、人間の都合でヤギが持ち込まれて、人間の都合でヤギを駆除する事に対して、動物愛護団体的な方々からのアレルギー反応が強かったんです。小笠原など、東京都ではどのようなピーアールをして理解されたのでしょうか?

横畑泰志准教授

心情的なものに関しては、心情的に対処するのが一番良いのだと思います。今、外来種問題が日本中で大きな問題になっています。哺乳類で言えば、アライグマ、マングースなど。それらに関して殺してしまうのは可愛そうだという声は沢山あります。特に一番多いのは猫ですね。
少なくとも外来種問題研究者が理解しているのは、外来種も被害者なんだということです。彼らも被害者で悪いのは人間なんだと。殺される彼らも可愛そうだが、僕らは殺すんだと。それは在来種を守るためだというはっきりとした理由があるからです。ブラックバス一匹いる為に、何百何千の在来種が捕獲されているわけですからね。むしろ数だけが問題ではないが対策として放置している事は出来ないのは明らかだ。ところが最近、外来種で金が稼げるという事にだんだんなってきている。駆除すると補助金がもらえます。だから、中には沢山殺して儲けたい人もいるのだと思います。彼らは動物愛護団体と我々研究者の共通の敵ですね。彼らに非難を集中させて、愛護団体に向けて「我々はあなた方と同じ思いなんですよ」と言いながら、外来種を駆除するのも一つの手かと思います。

山田吉彦教授

速やかにやるべきですね。

4.センカクモグラを守る会の今後などについて

司会

野口健さん、2010年10月25日に、この「センカクモグラを守る会」として環境省へ「尖閣諸島 魚釣島の生態系保全に関する上陸調査の要望書」を提出されたかと思います。環境省からの回答はいかがだったのでしょうか?

野口健代表

2010年10月25日に環境省に上陸調査の要望書を提出した時はまだ、尖閣諸島を埼玉県の地主から国が借り入れていて上陸に関しては内閣官房室がその窓口でした。ただ僕らは生態系を調査したいという事だったので、窓口が環境省になったわけです。だから環境省の方に対して、学者の先生方が上陸して調査をさせてほしいと要望書を出しました。

なぜ、提出がこの時期だったかというと2010年10月26日にCOP10(生物多様性条約締約国会議)が名古屋で開催されていたので、これに合わせた形です。日本も1993年にこの条約を批准し、その条約の中には外来種によって固有種が脅かされる場合は外来種を撲滅しなければならないと明確に書いています。
日本は世界に対して固有種を守る事を宣言した以上は、そのアクションを起こさなければいけないと思い、COP10にあわせて提出をしました。ただ、環境省からの回答は下記のようなものでした。

環境省からの回答

国の機関を除き、上陸等は認めないという所有者の意向をふまえ、また、尖閣諸島の平穏かつ安定的な維持及び管理のためという、政府の賃借の目的に照らして、政府としては原則として政府関係者を除き何人も尖閣偉諸島への上陸を認めないという方針を取っており、貴会の要望に対する考え方もこの方針のとおりです。なお、環境省としては、引き続き、尖閣諸島も含め我が国の生物多様性の現状に関する一層の情報収集に努めてまいります。

つまり、一度提出したら却下されました。今後、どのタイミングで提出するかが問題なんだと思います。自民党が政権与党になり、野党時代の自民党は横畑准教授の講義の中にもありましたが、石原(現)環境大臣が幹事長当時に予算委員会で「センカクモグラの生態系調査等の上陸調査をなぜ政府は認めないのか?」といった発言をしてくれていました。野党だから言えたのかもしれませんが、これはタイミングなんだと思います。「領土問題はない」とはいえ実際には「政治問題がある」わけですから、我々もタイミングを見計らって次回提出をしたいと思っています。いつ頃が良いですかね??

山際大志郎内閣府大臣政務官

不肖ながら私も内閣の一員をしているわけですが、政府の一員として言えるのは、いつか必ずピタッとはまるタイミングが来ると思うんです。これは内閣の中に居れば「このタイミングだ!」と分かる。我々が必要な事は「このタイミングが来ました!」と言ったときに、「準備不足でそのタイミングに乗れません」というのは最悪。如何に用意周到にしておくかが必要だと思います。それをこれからこの会を発展させていくうえで、どのような用意をしていく事が必要か?を練り上げていく事が必要だと思います。

司会

皆々様、有難うございました。さて、ここでがらりと話が変わりますが...。野口健代表から提案があるとお聞きしておりますが?

野口健代表

はい。本当にがらりと話が変わるのですが...。「センカクモグラを守る会」と言っていますが、僕らにとってセンカクモグラはある意味スターなんです。横畑准教授にとっては恋人のようなものですね(笑)。センカクモグラというスターを僕らがアピールすることによって尖閣諸島に生息している動植物を守ろう、これからも幅広く訴えて行こう、という事でセンカクモグラのキャラクターを募集したいと思います。意外とキャラクターというのは伝えていくうえでは重要な役割を果たしていくと思うんです。ですから、センカクモグラを守る会としてセンカクモグラのキャラクターと名前を日本中に呼びかけて募集をしていきたいと思います。

司会

今、野口健代表から素晴らしい提案を頂きました。もしかしたらこのキャラクターのワッペンが野口さんの登山用ジャケットや帽子に張り付けられるかもしれないですね??

野口健代表

はい!!ヒマラヤへ行くときに、センカクモグラのキャラクターワッペンを必ず付けて行こうと思います!!

司会

ご来場の皆様は一番にこの募集要項を知ったわけですから、是非ご応募ください。採用されれば、TVや野口さんの山用ジャケット、帽子にそのキャラクターを見る事が出来るようになりますので。

野口健代表

キャラクターは意外に行けると思うんです。キャラクターから広がって、キーホルダーや、ぬいぐるみ等。あとは、キャラクターの着ぐるみを作って横畑准教授にかぶってもらうとかね(笑)。こういう広め方もありかなと思いますので、これから、準備が出来次第SNSで告知し幅広いく募集することをメディアに発信していこうかなと思っています。

山際大志郎内閣府大臣政務官

先ほど横畑准教授から、「この活動がどのような役割を担っていくか?」との、お話しの中で「国民に対しての周知活動が重要だ」とお話しされていました。横畑准教授のお話は面白いのですが、聞くのに一時間かかりますので...(笑)。それをみんなに聞いてほしいと言っても、なかなか難しい場合もあります。しかしキャラクターだったら一瞬で伝わるわけですね。それだけ突破力があるんだと思うんです。どんなものが来るのか?まだ分かりませんが、ぜひ広くキャラクターを募集したいと思います。


横畑泰志准教授

商売柄、動物のはく製をいつも作っているので、ぬいぐるみの一つや二つは簡単にできるのですが(笑)キャラクターと言ってすぐに思い浮かぶのが熊本県の「くまモン」ですよね。「初音ミク」だとテクノロジーが必要ですが...。
それと、ある国では上野動物園にいる白と黒の動物でえらい儲けていると思います。それに、負けないように頑張りたいと思います。

野口健代表

第一回目のシンポジウムの時、配布資料の中にモグラの絵を入れたんです。確かネットで無料で使えるモグラの絵を調べたら大量に出てきたんです。日本人は意外とモグラが好きなんですね。あと3年前、環境省でこの会の立ち上げの記者会見をした際、「モグラ叩き機」を作っている日本のメーカーの社長から連絡があって、「我々は、さんざんモグラを叩いて商売をしてきた。だから、是非とも協力させてもらえないか」との申し出を頂いた。その後、連絡はありませんが(笑)。でも、考えてみると、このゲームしかり、意外に日本人はモグラに愛着があるんだと思うんです。

司会

お話を聞いていると熊本県の「くまモン」や彦根市の「ひこにゃん」のように異常に売れるような気がしてきましたね。ただ、この版権は「センカクモグラを守る会」にありますので(笑)、そこだけは皆様宜しくお願い致します。

5.会場からの質疑応答

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貴重なお話有難うございました。山際先生にお伺いしたいのですが、先ほど「いずれタイミングが来る。その時に備えて準備を怠らないようにしなければならない」とおっしゃられていましたが、例えばヤギを駆除する為にはどのような準備が必要なのでしょうか?

山際大志郎内閣府大臣政務官

これは私だけで決められるものではありません。例えば生物学の先生方が生物学的に調査をする際、どのような事が必要かだと思います。
これも私の私見ですが、ヤギの駆除であれば東京都が一番ノウハウがあると思います。ここにおられる山田先生は東京都の尖閣諸島調査委員だし、野口さんは都レンジャーの名誉隊長。お二人とも東京都に深くかかわっている方々。ヤギを駆除する為の調査をするにはどの人たちが必要か?選別をしておかなければならないし、その人を東京都から借りるという算段もしておかなければならなりません。実際に行くという話になれば、根回しが必要になってきます。上陸した瞬間にその日のうちに一発で解決出来ればベストですが、そういうわけにはいきません。「電光石火に」と言っても一日で済む話ではないので、それをどのように準備しておくかだと思います。

山際政務官の回答を受け、先ほど横畑先生はスナイパーを雇ってヤギを駆除するという話をしていましたが?そのような方も含めて用意が必要なのかな?と思ったのですが。

横畑泰志准教授

ヤギの駆除をする前に、固有種の生存確認が必要。もう既に全部いないかもしれない。どのような研究者が必要かといえば、ヤギの専門家、それとモグラ・昆虫・植物・蟹・鳥・これは固有種ではないが爬虫類・陸生巻貝など、それぞれの専門家、あとは、シンクタンクや大学の教授2・3人、計10数名の専門家がいれば対処できると思います。また、それらの専門家に関しては、だいたい目星はついています。

有意義で具体的なお話、有難うございました。山際さんにお伺いしたい。将来、自然豊かな、資源が沢山ある尖閣諸島で開発が行われた時、センカクモグラの保護をはじめとする環境問題に対してどのような対策を練られているのか?

山際大志郎内閣府政務官

正直に申せば、考えていないと思います。今現在、環境問題以前の所で止まってしまっているので。非常に大きな文脈の中で八重山諸島なども含めて、マクロな目で環境政策をどうするかは決まっているかと思いますが、尖閣に特化してどうするかという環境政策はないと思うし議論もされていないと思います。たぶん、今の環境省では議論できるだけのデーターもありません。あそこを開発するアイディアも環境省にはありません。そういう段階だと思います。

山田吉彦教授

東京都で考えていたレベルで言うと、環境保護という名の開発行為。環境を維持していくためにはどのような行為をしておかなければならないか?開発行為をするためにはちゃんとした調査をする。一度、人の手の入った環境は、常に人が維持管理をしていかなければならない。魚釣島は既に昔、人の手が入っている。それを整備し、元あった環境に近いところで維持していくには開発行為が必要。新しい箱モノを建ててという話ではなく、しっかりとした下草狩りのタイミングを含めた開発が将来的に必要だろうという事だった。

今回、尖閣諸島のヤギが全て駆除されて、魚釣島が元あった自然の状況・環境に戻るには、ヤギを駆除してからどれぐらいの期間が必要なのでしょうか?一部に極相林が見えるが、どれぐらいの期間で植物と動物が回復するとお二人の学者の先生方は、お考えでしょうか?

横畑泰志准教授

正直分かりません。まず、どれぐらいの影響が出ているのか?少なくとも木が生えている所は人工衛星からは見ることが出来ない。先ほどもお話ししましたが、林床の状況がどうなっているのか?私は関西の生まれなんですが、奈良県の奈良公園にはモグラが一匹も生息していないと思います。あれだけ芝が鹿に食われて、また、人工的にも芝地にされているとモグラは住めない。だから、尖閣諸島が既にそうなっているのか?まだ、残っていて細々と生きているのか?今の段階が分からないと、それが回復して行った時にどうなるかが分からない。だからこそ、やはり上陸調査をしなければ分からない。ただ、先ほど申し上げましたが、植物なんかは今、地上に一本もなくても、種が埋まっているので、緊急性が高いのはサワガニやモグラなどの動物だと思われます。
例えば、ウオツリナガキマワリなんかは朽木を食べるので朽木があれば生きていける。ヤギは一時的に朽木を増やしますので、これに関しては、しばらくは安全圏内だとみています。一つ一つの動植物にあてはめて考えていく事はできますが、今の状況がどこまで落ちているのか?分からないので、落ち方が低ければ回復は早いし、そうでなければ遅くなる。今は、これぐらいしか申し上げられない。

山田吉彦教授

私が言えるとすれば、何もしなければ状態が悪化するという事。
スタートラインを決めて速やかに調査をして行かなければ良い方向には向かって行かない。今の段階で早く手を打たないと、未来を、手を打つきっかけを、無くしていく可能性がある。それだけ距離が近くに迫っている。中国の漁船団の問題などもある。山際先生にもご尽力いただいて、まずは上陸調査を実現させてもらいたい。

6.閉めのことば

野口健代表

本当に本日は有難うございました。このセンカクモグラを守る会も3年目にはいりました。いつの政権も出来ればこの尖閣諸島に関する問題に触れたくないというのが本音なんだと思います。民主党政権の時は、野党自民党が意外と尖閣諸島の話を取り上げたりしました。昨年末に行われた衆議院議員総選挙の自民党政権公約の中にも、尖閣諸島に公務員を置くという事が記載されていた。政権交代が実現したからと言ってすぐにできるものではないし、実際は出来れば触れたくなかったのだと思う。

それは、環境省も一緒だった思うし、今日話しあわれたような「尖閣諸島を石垣の国立公園の中に入れよう」という話になったら、まず環境省がひく。たぶんみんながこの問題にかかわりたくないんだと思います。だから、時の政権からすれば、風化して国民の意識から薄れていく事が望ましいと思っているのだと感じます。そうならないように、僕らは環境問題を切り口に、訴え最終的に国が購入したわけですから国の責任においてきちんと管理をして頂きたい。

私としては東京都が購入してくれた方が、よかった。東京都はこの問題に関して腹をくくっていたから購入していれば、東京都レンジャーの名誉隊長として今頃は間違いなく上陸調査をしていたし、船が着岸できる港などを造るなどしていたでしょう。でも国が間に入って、購入したわけですから、国が責任を持って管理する。国が維持管理をしていくためには、世論が大事だし、議員連盟の役目は非常に大きいと思います。小池百合子さんが議連の会長になられて、小池会長は環境問題の専門家であり国際的にも発信力がある方。後は、注目されなければ風化するので、小池さんが色々なところで声を上げてくれる、議連のメンバーと我々「センカクモグラを守る会」が連携をして、僕らの声をどのように政治の世界に反映させていくか?そして、日本中が盛り上がっていけば動かない山も動くんじゃないかなとおもいます。この会の趣旨は、日本だけでなく色々な国の生物学者によって上陸調査が出来るようにしたい。そして、生物調査の研究所等の施設ができれば良いし、究極のエコツーリズム島になれると思う。もちろん、あんまり沢山お客さんが来ると困るので、小笠原の南島は1日100人、尖閣も1日何人と決めて、エコツーリズムなどをしていけばいいと思う。
このメンバーは皆しつこい方々ですのでしつこく、しつこく伝えていきたいと思っております。本当に本日は有難うございました。

7.当日の報道内容

・朝日新聞

・週刊SPA! 3月31日 https://nikkan-spa.jp/413999

・日刊フジ 3月29日 http://www.zakzak.co.jp/society/domestic/news/20130328/dms1303281217011-n1.htm

・読売新聞 4月6日

最終更新日  2013年7月26日