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第4回センカクモグラを守る会シンポジウム ご報告

第4回センカクモグラを守る会シンポジウム ご報告

2014年10月23日(木)、東京都千代田区の砂防会館にて第4回「センカクモグラを守る会」シンポジウムを開催いたしました。雨の中、120名を超える方々にご参加いただきました。ありがとうございます。以下は当日のシンポジウムの記録です。ぜひご覧ください。

第4回「センカクモグラを守る会」シンポジウム

「はじめに」 センカクモグラを守る会 共同代表 野口健

センカクモグラを守る会 共同代表 野口健

皆様、本日はありがとうございます。こういったシンポジウムにこれだけ多くの方にご参加いただき、うれしく思っています。「センカクモグラを守る会」を立ち上げ、今年で4年目になりました。そもそもなぜこのような会を立ち上げたのか、について少しお話させていただきます。

今から4年前、中国との中で尖閣諸島に関する問題が随分と報じられていました。この問題に対して自分だったら何ができるだろうかと考えていく中で、尖閣諸島について調べていくうちに、センカクモグラの存在に出会ったのです。

しかし、センカクモグラに限らず、尖閣諸島は、ほかにも多くの固有生物がいて、その大半が絶滅危惧種になっていること、人間が持ち込んだヤギによって環境破壊が起きていること、など多くのことを知りました。

そして「尖閣諸島の生態系や自然をどう守っていくのか?」といったテーマに焦点を絞り、象徴的な存在としての「センカクモグラ」の名前を冠し、当会を立ち上げました。

ただ、こういった問題というのは、人の関心がなかなか続くものではありません。当会としては、とにかく声を上げ続けていこうということで、本日、第4回目のシンポジウムを開催するに至りました。これから約2時間、よろしくお願いします。

「来賓挨拶」
衆議院議員小池百合子先生(センカクモグラを守る国会議員の会 会長)

衆議院議員小池百合子先生(センカクモグラを守る国会議員の会 会長)

皆様、こんばんは。ただいまご紹介を賜りました「センカクモグラを守る国会議員の会」の会長を務めさせていただいております小池でございます。
 ふと、23年前に参議院に当選いたしました日のことを思い出しました。永田町にはキツネやタヌキがいっぱいいるからと、初日にサファリルックで登院しましたら、いきなり懲罰委員会の対象になるという大変なスタートを切ったんですね。そのことを改めて思い出したところでございます。
永田町も大変多様性に富んでおりますが、日本の固有の生態系も守っていかなければなりません。「センカクモグラを守る会」は一種、その象徴だと感じています。
 日本は島国であることは言うまでもございません。本州、四国、九州と、このように、小学校で覚える大きな島を加えまして、すべてで6,852の島々がこの日本にはございます。そして、それぞれの生態系があり、それらを守っていくということは、環境保全のみならず、ひいては領土、領海、領空を守るということにもつながってくるかと思います。
これから2時間、たっぷり学んでいただき、そして思いを共有していただいて、これからも日本を守っていきましょう。本日のシンポジウムが実りある時間となりますこと、改めてお祈り申し上げまして私からのごあいさつとさせていただきます。

「センカクモグラを守る会」キャラクターデザインおよび名称発表

シンポジウム冒頭で「センカクモグラを守る会」のキャラクター名称及びキャラクターデザインの発表をいたしました。
全国からたくさんの応募をいただき、結果、静岡県在住の高柳順子さんがデザインされたキャラクターが選ばれました。またネーミングに関しては兵庫県在住の前田日香里さんの「もぐもぐせんちゃん」に決定しました。

センカクモグラを守る会マスコットキャラクター「もぐもぐせんちゃん」 キャラクターデザインの高柳順子さん
もぐもぐせんちゃんのワッペン

もぐもぐせんちゃんのワッペン
野口のヒマラヤ遠征のウェアにつけます

パネルディスカッション開始前に、ただいま衆議院議員の牧島かれん先生が到着されましたのでご挨拶をお願いしたいと思います。牧島先生は「センカクモグラを守る国会議員の会」の事務局を務めていただいております。先生、よろしくお願いいたします。

「来賓挨拶」
衆議院議員牧島かれん先生(センカクモグラを守る国会議員の会 事務局)

衆議院議員牧島かれん先生(センカクモグラを守る国会議員の会 事務局)

お時間をいただきましてありがとうございます。「センカクモグラを守る国会議員の会」の事務局を務めさせていただいております神奈川17区の衆議院議員牧島かれんと申します。
 今日は、マスコットキャラクターが初お目見えと伺っており、楽しみにしておりました。センカクモグラをはじめとする日本の固有種の保全や様々な環境問題、そして、私たち日本が世界にどのような貢献ができるかという点につきましても、皆さまからご指摘いただいているところだと思いますので、「センカクモグラを守る国会議員の会」としても勉強しながらまとめていきたいと思っております。本日はよろしくお願いします。ありがとうございました。

パネルディスカッション

パネリストプロフィール

パネルディスカッション

野口 健  アルピニスト

1973年8月21日生まれ。高校時代に故・植村直己氏の著書『青春を山に賭けて』に感銘を受け、登山を始める。1999年、エベレストの登頂に成功し、7大陸最高峰世界最年少登頂記録を25歳で樹立。 また2007年5月にはエベレストを中国側(名称:チョモランマ)から登頂に成功。ネパール側ならびに中国側から登頂に成功したのは日本人では8人目である。2000年からはエベレストや富士山での清掃活動を開始。以後、全国の小中学生を主な対象とした「野口健・環境学校」を開校するなど積極的に環境問題への取り組みを行っている。

山際大志郎 衆議院議員

東京都出身。神奈川県立湘南高等学校卒業。山口大学農学部獣医学科を卒業後、東京大学大学院獣医学専攻博士課程に進学し、1999年に修了(獣医学博士取得)。大学・大学院ではクジラを研究。その後一貫してクジラ問題に取り組む。1995年には南大洋鯨類環境国際調査に日本代表調査研究員として従事。東京大学動物医療センターで1年間の研修を経たのち、自らペットクリニックを開院、経営に当たる。現在は衆議院議員をつとめる。

横畑泰志 富山大学大学院理工学研究部教授

大阪府出身。岐阜大学農学部獣医学科を卒業後、1989年に北海道大学大学院獣医学研究科博士後期課程を修了(獣医学博士)。現在は富山大学大学院理工学研究部・理学部生物圏環境科学科 野生動物保全学研究室教授。環境省第3次レッドリスト見直し検討委員会哺乳類分科会委員、日本生態学会自然保護専門委員会委員(魚釣島要望書アフターケア委員会委員長)、日本哺乳類学会哺乳類保護管理専門委員会委員。野生動物研究者としてモグラ類の生態研究などを行い、地元の自然保護運動にも加わると同時に、1997年より魚釣島のヤギ問題に取り組んでいる。

山田吉彦 東海大学 海洋学部教授

東海大学海洋研究所次長。公益財団法人国家基本問題研究所理事。1962年千葉県生まれ。学習院大学経済学部を卒業後、東洋信託銀行(現三菱UFJ信託銀行)勤務を経て、1991年から日本財団(日本船舶振興会)に勤務。海洋船舶部長、海洋グループ長などを歴任する傍ら、多摩大学大学院修士課程を経て埼玉大学大学院経済科学研究科博士課程修了。博士(経済学)。2008年に東海大学海洋学部准教授に就任し、2009年より現職。

国土交通省海洋政策懇談会委員、東京都専門委員、石垣市海洋基本計画策定委員会会長などを歴任。専門は海洋安全保障、海洋国境問題、離島振興、現代海賊問題、沿岸域管理。 『海洋資源大国 日本は「海」から再生できる』(海竜社)、『日本の国境』(新潮新書)、『海賊の掟』(新潮新書)、『日本は世界4位の海洋大国』(講談社プラスアルファ新書)、『侵される日本』(PHP研究所)、『国境の人びと 再考・島国日本の肖像』(新潮選書)など、著書・論文多数。

葛城奈海 やおよろずの森代表、キャスター、俳優

東京大学農学部卒業後、TVドラマ、CFに出演。自然環境問題・安全保障問題への取り組みをライフワークに、森づくり、米づくり、漁業活動等に参加。現場体験をもとに、執筆、講演等でメッセージを発している。
月刊『山と渓谷』年間表紙モデル&ライター(2005年)、TBSラジオ『ちょっと森林のはなし』森の案内人(2008~2011年)を務めた。林政審議委員。公募予備自衛官。日本文化チャンネル桜『防人の道』レギュラー出演中。

パネルディスカッション

司会:

さて、それでは只今よりパネルディスカッションを始めさせていただきます。まず始めに、パネルディスカッションの前に行われた葛城さんからのお話の中で、尖閣諸島の漂着ごみに関する報告がありました。野口健さんは西表島などで同じく漂着ごみの清掃活動をされていますが、漂着ごみの動植物への影響などについてお聞かせください。

野口:

やはり、ごみを鳥が食べてしまったりすることは多いですね。他にも、ウミガメが上陸して産卵し終え海に戻ろうとした時に漂着ごみに引っかかってしまい、戻れずに死んでしまった例などがありますね。
  またヤドカリが貝ではなく、洗剤のキャップをすみかにしてしまうこともありました。海岸に洗剤のキャップがたくさん動いているんです。山岳地帯のごみも大変ですけれども、それ以上に海岸のごみは流れ着くので、拾っても、拾っても、終わりがない。やはり、拾うだけでは限界だな、とは感じています。

司会:

ありがとうございました。横畑先生、何かございますか。

横畑:

今、仰られている漂着ごみとはちょっと概念が違うのですが、漂着廃棄物で最も自然環境や野生生物に影響が大きいものは油です。タンカーの沈没事故などがありますと、大量の重油、あるいは原油が流出します。たとえばアラスカでは何千頭といった数のラッコが死んでしまいました。
私がセンカクモグラに関する活動を始めた1997年に日本海で奇しくも起こった、ナホトカ号重油流出事故では、少なくとも分かっているだけで500羽ほどのウミスズメ(絶滅危惧種)の死亡が確認されています。漂着廃棄物の問題というのが非常にクローズアップされた1つの出来事であったかなと思っています。

司会:

ありがとうございます。山田先生は尖閣諸島の調査に行かれていますが、いかがでしょうか。

山田:

漂流ゴミは、北西風に流されて東シナ海を越えてくるものですから、どうしても尖閣諸島に集まってしまいます。しかも回収はまったくできないので、ごみの上にごみが積み重なっていく。まさに今、そういう状態です。
他にも周辺の島、例えば石垣島では、医療廃棄物が多く見られます。私は学生を連れて何回かごみ拾いに行きましたが、注射針や薬の瓶などの医療廃棄物が多く見られ、非常に危険なのです。そのほとんどが中国製、洋上で投棄されていると考えられます。
海まで持って来て捨てて、それらが流れ着いてしまいます。ですので、常に人が監視するなどして守っていかなければ、海の環境が守れない状態になっていると思います。

司会:

ありがとうございます。葛城さん、いかがでしょう。

葛城:

先程の私の活動報告の中で、西表島の漂着ごみは中国からのものが一番多い、というデータを紹介した関係で、「中国はけしからん」と思われる方も多いかも知れないのですが、
これはエリアによって異なるんですね。たとえば以前、対馬を調査した際には、対馬の漂着ごみは韓国が圧倒的に多い。では、「韓国はけしからん」となるのか。そういうことを言いたいのではないのですね。
では、一体、何が言いたいかと申しますと、実は日本もあまり他国のことを言えない、ということなんです。野口さんが富士山の山麓でごみ拾いをされていますが、不法投棄の惨状は目にあまるものがありますし、漂着ごみに関しましても、たとえば鹿児島県だったら44パーセントの漂着ごみが日本であり、最も多いわけです。他にも兵庫県では71パーセントの漂着ごみが日本のもので、これも最も多いわけです。
拾う活動というのは、ごみがある以上続けないといけないと思っていますが、そもそもごみを出さない努力というのは、ひとごとではなくて、私たち日本人自身もしっかりやっていかなくてはいけないと思います。

司会:

ありがとうございました。ちょうど平成23年から3年間かけて環境省が実態調査を全国7カ所ほどやっていたという資料があります。それには鹿児島、兵庫、茨城などの太平洋側ではやはり日本のごみが多かったとあります。逆に、沖縄、山口、石川など、東シナ海や日本海側では中国、韓国のごみが多かった、といったデータも出ておりましたので、付け加えさせていただきたいと思います。
あと、山際先生にお聞きしたいのですが、今、野口さん、葛城さんが活動されている漂着ごみの清掃活動は、政策的に見れば所謂、川下での活動になるかと思いますが、国としての、川上の政策についてお聞かせください。

山際:

まず、先ほど葛城さんの発言にもありますように、漂着ごみの問題は誰かを悪者にしたところで問題解決しないのです。我々日本人からすると何故そんな非常識なことをやっているんだ、といった感覚を持つようなことを、今、中国や韓国がやっている。しかし、実のところ3~40年前まで遡ると我々日本人もやっていたことなんですね。つまりおそらくは時間軸の問題になるんです。したがって、前向きにこの問題をどうしていくか、ということになると、やはり法律が必要になってくると思います。
これらの問題に対して「美しく豊かな自然を保護するための海岸における良好な景観及び環境の保全にかかわる海岸漂着物等の処理等の推進に関する法律」という、すごく長い法律があるんですね。たとえば地方自治体がなにか取り組みを行う際には補助金を出す、といったことをはじめ、この問題に取り組む際のことをが書かれています。
また他にも、韓国や中国とは政治的に様々な問題があるかも知れないけれども、この問題に関してはきちんと話し合いをし、共同で片付けられるような方策を練ろう、といった取り組みをしています。
具体的には日中韓3カ国環境大臣会合というのがございまして、今年の4月に韓国で開催されたものです。かなり突っ込んだ話し合いになりまして、これからの話ですけれども、3国間で共通の環境問題として協力をして取り組んでいきましょうということが、3大臣、各国の大臣によって覚書がなされたということでございます。

会場に座りきれないほどの120名を超える方々にお集まりいただいた

司会:

ありがとうございます。ほかに何かございますでしょうか。

山田:

漂着ごみの処理はその地域の行政の責任になります。たとえば対馬。対馬のものでないごみが対馬に流れ着く。離島の多くがそうですが、対馬もごみの処理機能が低いわけです。そのため、産業廃棄物として処理ができる地域まで輸送する必要がでてきます。
当然ですが輸送費や処理費の問題が出てきます。では、一体そのお金をどこが出すのか。ようやく政府が動いてくれまして、先ほどの法律でごみを処理してくれるようになりましたが、まだまだ追いつきません。すべての海岸が対象になっているわけではないですし、ごみを集めるマンパワーも不足しています。
あと、漂着ごみの多くは、漁業関係のものです。漁師さんたちは、どうも昔からの習慣で海にごみを捨ててしまうのです。この件に関しては、一種の社会運動として、漁師さんたちにも改善を求めるべきだと思います。

司会:

漂着ごみの問題についてまだまだ続けたいのですが、時間が限られているため、次にうつりたいと思います。野口さん、挙手されましたが、何かありますでしょうか。

野口:

昨年のシンポジウムのときに、山田先生から「尖閣諸島、東シナ海を海洋保護区に」といったお話を伺いました。ただ、この海洋保護区というものが聞きなれないものでして、申し訳ないのですが、もう一度、お聞かせいただければと思います。

山田吉彦 東海大学 海洋学部教授

山田:

はい。ありがとうございます。これまで私は尖閣諸島、東シナ海を海洋保護区にして守りたい、ということを何度か提案してまいりました。具体的には、東シナ海に入る船の量をコントロールするなどの入域制限を行い、漁業の濫獲を抑止し、新たな開発に関しては十分に環境に配慮するなど、海をしっかりと守っていく、というものです。
ただ、日本における海洋保護区の概念ですが、これは内閣官房総合海洋政策本部が平成23年に触れています。それによればまず漁業規制海域があります。水産庁あるいは漁協単位で漁業の規制をかけている海域がある。これが海洋保護区にあたるということです。また環境省が決めている国立公園、国定公園の周辺海域もこれにあたります。結果、日本政府によれば、日本が管轄している海のおよそ8.3パーセントを海洋保護区にしているということになります。
  ただし、これはひとつの見方に過ぎません。漁業規制の有無や指定海域だけで海洋保護区と言えるかというと、恐らく国際的にはさほど通用しないのです。ある環境保護団体によれば日本は0.8パーセントしか海洋保護区になっていない、ということになります。
例えばアメリカでは、ハワイの北西、1,900キロの島々にわたって海洋保護区としています。どのような規制がかかっているかと申しますと、沿岸から200海里、370キロ、排他的経済水域内に入る船はすべて政府に対して届出をしなければいけない、というものです。
観光目的でも商業目的でもすべて入域制限をかけています。とにかく海に対して影響を与える可能性があるものはすべてコントロール下に置く、という徹底した守り方をします。
  これができるのはアメリカという国が大統領の方針に従って政府がルールをつくる。そして全体として守っていく、といったトップダウン方式をとっているからです。
私としては、できれば日本も、省庁ごと、たとえば環境省と水産庁の組み合わせなどではなくて、日本として、国家としてこの海をどうやって守っていくべきかという風に考えるべきだと感じています。

司会:

ありがとうございました。葛城さん、何かございますか。

葛城奈海 やおよろずの森代表、キャスター、俳優

葛城:

はい。石垣島の漁師さんと話をしていますと、尖閣諸島にあまり行かなくなった最大の理由は、中国船、台湾船の存在もさることながら、そもそも燃料代が上がってしまったことだと仰るんですね。聞けば燃料代は3、4倍になっているとのことです。ただ、これは石垣島の漁師さんだけではなくて日本全国で聞く話ではありますが。
しかし、こと石垣の漁師さんに関して言えば、尖閣諸島に漁に行ってくださっていることが、日本の島であるということを示しているわけで、漁師さんたちの足が遠のくようなことは避けたいと感じています。
このような状況の中で、例の東京都が行った尖閣諸島購入のための寄附金の行方について私は非常に気になっております。確か15億円近いお金だと思いますが、例えば今お伝えしたように漁師さんの燃料代の補助や漁師さんがもっと漁をしやすくなるようなことに使えないのか、というのが願望でもあり質問でもあるのですが。このあたり、東京都の専門委員でおられました山田先生、いかがでしょうか。

山田:

現在、東京都の一般会計から外して、基金を立ててある状況です。国が尖閣諸島を購入した以上、国が開発計画を推進するにあたり、その方針が決まった際に国からの申請に基づいて基金を国にお渡しする、ということになっています。
ですから、私は、逆に民間から「是非こういうことに使ってもらいたいんだ」と国と東京都にご提案いただき、国民が納得する考えの下に動くべきだと感じています。
例えば自然環境の調査にあてるのもよいでしょう。何よりも尖閣諸島の自然が今どういう状況になっているのか、長年上陸調査が行われていないのですからそもそもわかっていないわけです。したがいまして、まずは尖閣諸島の自然環境の調査団のかかる費用として用いるべきではないか。それが一番有効なのではないかと思います。
自然環境を守るのに「中国だ」「日本だ」と声高に言う必要はありません。世界中の方々が東シナ海にある重要な島の環境を守る、ということなんです。尖閣諸島は黒潮のまっただ中にある。黒潮のメカニズムを解明していくためにも、この島々の研究というのは重要になってくるのです。私個人としては、そういった方向で使えたらいいな、という願いがあります。結果的に環境保護活動をする日本に、尖閣諸島における主権を世界が認識することになります。いずれにせよ、基金の今後は注意深くチェックしていくべきだと思います。

司会:

ありがとうございました。横畑先生、何かございますか。

横畑泰志 富山大学大学院理工学研究部教授

横畑:

私は一介のモグラ研究者ですから、海のことは詳しくはありませんが、それでも自然保護一般の活動をしている中で、珊瑚礁の激減や干潟が何分の一になってしまった、といった話はよく耳にします。
私の地元は富山でして、先ほど少しお話ししたナホトカ号の事件の際も様々な調査をしましたが、隣の石川県は自然海岸が大半です。恐らく日本であんなに自然海岸が残っている県は少ないと思います。
一方、富山県は悲惨ですね。ほとんどコンクリートの海岸になってしまっています。自然保護課が富山県にはありますけれども、まったく海のことはやりません。立山のことと、シカやイノシシといった鳥獣のことで手がいっぱいで、マンパワーが足りず、海のことはできない。海に関しては、日本海政策課という課が別にありまして、そこに任せているわけです。でも、あくまでも日本海政策課ですから自然保護専門の部局では決してないのです。こういった観点で地方自治体の抱える問題を見ていると、海の環境保護は本当に手薄だなと日々思っております。
山田先生は全国の状況をご存じだと思いますけれども、地域による違いについて何かありましたらお伺いしたいです。

山田:

一例を示すと、大阪ですね。世界で最も護岸工事率が進んでしまっています。津波が怖いからと言ってすべてを防波堤にしてしまったら、海が見えなくなってしまいます。海を見ない日常というのはより怖い。例えばオランダやドイツでは、人工的につくった灌漑を、人の力で自然に戻していこうという動きが今始まっています。海の状態を、より自然に近いかたちに戻していこうとした取り組みです。
  たとえば漂着ごみに対して問題意識がないという方の多くは普段海を見ていないのです。きれいな海を知っていれば、当然ごみが流れてくる海というのも分かるわけです。そうすると、ごみをどうにかしなければいけない、ということにつながります。
  ただ、問題意識というのはやはり国民性があるんですね。大陸のほうの大きな国は、海を汚すことに問題意識が希薄だと思います。だからスピードを上げて沿岸開発をすすめ、結果、東シナ海も含めて、海の環境すら変わってきているのです。

司会:

ありがとうございました。山際先生から何かございますか。

山際大志郎 衆議院議員

山際:

まず、先ほどの葛城さんの発言にもありますように、漂着ごみの問題は誰かを悪者にしたところで問題は解決しないのです。我々日本人からすると何故そんな非常識なことをやっているんだ、といった感覚を持つようなことを、今、中国や韓国がやっている。
しかし、実のところ30~40年前まで遡ると我々日本人もやっていたことなんですね。つまり、おそらくは時間軸の問題になるんです。したがって、前向きにこの問題をどうしていくか、ということになると、やはり法律が必要になってくると思います。
これらの問題に対して「美しく豊かな自然を保護するための海岸における良好な景観及び環境の保全にかかわる海岸漂着物等の処理等の推進に関する法律」という、すごく長い法律があるんですね。たとえば地方自治体がなにかしらの取り組みを行う際には補助金を出す、といったことをはじめ、漂着ごみ問題に取り組む際について必要なことが書かれています。
また他にも、韓国や中国とは政治的に様々な問題があるかも知れないけれども、この問題に関してはきちんと話し合いをし、共同で片付けられるような方策を練ろう、といった取り組みをしています。具体的には日中韓3カ国環境大臣会合というのがございまして、今年の4月に韓国で開催されたものです。かなり突っ込んだ話し合いになりまして、これからの話ですけれども、3国間で共通の環境問題として協力をして取り組んでいきましょうということが、各国の大臣によって覚書にされたということでございます。

司会:

ありがとうございました。最後に横畑先生、尖閣諸島のヤギの駆除についてお聞きしておきたいのですが。

横畑:

いろいろな方法が考えられますね。おそらく火器を持ち込んで片っ端から撃ってしまうようなやり方は、今の魚釣島でやったら大変なことになるだろうと思っています。
ハワイなどの幾つかの島では、とにかくヤギが入らないところを柵で囲って、その中だけでも守ろうというようなことをやっています。もしかしたら魚釣島ぐらいであったら、南斜面は断崖絶壁で固有種のすみかにもなっていませんから、北斜面を重点的に守るとして、例えばその一角にヤギが入らないような囲いをつくるという方法も考えられます。
あるいは逆に北斜面からヤギを全部追い出す。これが第一段階で、第二段階はその囲いをどんどん広げていくのですね。魚釣島くらいの小さい島でしたら、何回か広げたら北斜面の大半を覆えるのではないかと思っています。
本当にできるかどうか分かりませんけれども。とにかく地形が複雑ですからね。でも、この方法でいけるのではないかと感じていますが、また専門家にご意見なども聞いて検証したいと思っています。

「閉会の言葉」

センカクモグラを守る会 共同代表 野口健

尖閣諸島の問題について、当会を立ち上げた4年前と比べるとまったくといっていいほど世の中の関心が薄れています。こういった問題は関心を失ったところに隙ができると思うのです。相手はどこかと言いませんけれども、虎視眈々と狙っている相手が仮にいたとして、それに対して日本人が危機感をなくしてしまうと、色々と隙が生まれ、「あれ?」と気づいた時には持って行かれてしまう、ということが僕はあると思うのです。
ですから、このように色々な切り口で皆様に関心を持っていくということがとても大事だと感じています。その中で、僕らは尖閣諸島の生態系、環境問題ということを1つの切り口にしてやってきました。ただ、話題がなくなると、忘れられるのも早いものですし、日本人は特に危機感を持ち続けることが苦手なのではないかと感じています。
したがいまして、今回は冒頭でキャラクター発表をさせていただきましたが、こういった新たな話題でもって多くの方に尖閣諸島について再び関心を持ってもらえればと考えていました。
これからも色々な話題を僕たちなりに発信しながら、長期的には尖閣諸島への上陸調査に国が許可を出した際にどういった対応ができるかということを、当会としても準備しておきたいと思います。
上陸調査の要望書に関しては、前に国に提出しましたけれども却下されました。次にどういったタイミングで提出するかというのは「センカクモグラを守る国会議員の会」の先生方とも情報交換を行いながら、どのタイミングでそのカードを切るか、を考えていきたいと思います。

最終更新日  2015年1月19日